Protest The Hero ジャンルごちゃ混ぜバンド フルアルバム全4作レビュー
メタル・ラウド系6弦ベーシスト
轟音ファクトリーのSUMI-chang(すみちゃん)です。
今回は"Protest The Hero"(プロテスト・ザ・ヒーロー)のフルアルバム全4作レビュー。テクニカル・メロディック・プログレッシブな、カナダのバンドです。
はじめに
バンドの構成はヴォーカル、ギター ×2、ベース、ドラムの5人から成る。
オンタリオ州ワイトビー(カナダ)にて学校の友人同士の5人がバンドを結成。結成当初は90年代のハードコア、特にPropagandhiからの影響を受け、より政治的メッセージの強いバンドであったが、近年はスクリーモ、メタルコア、プログレッシブ・メタルなど様々な要素を取り入れ、独自の路線を貫いている。
彼らのような「ジャンルごちゃ混ぜバンド」は、現在そう珍しいものではなくなりました。しかしデビュー当時はそういったバンドがまだ多くなく、新しいサウンドに衝撃を受けたことをよく覚えています。
伸びやかな歌唱とシャウト・デスヴォイスを使い分けるVo.ロディ・ウォーカーが強烈な印象を与えるプロテスト・ザ・ヒーロー。2017年現在リリースされているフルアルバム4枚を「ベースの聴きどころ」とともに紹介します。
Kezia (2005年)
ファーストアルバム。メタルにパンク・ハードコア的な要素を混ぜ込んで、ロディのオペラチックなヴォーカルで味付け。非常に尖った音作りと曲展開が特徴のアルバムです。ガッチガチのバッキングにストレートなボーカルが映える、ありそうでなかったサウンド。
※既にリマスター版も存在します。今から聴くならこちらがおすすめ。
- アーティスト: Protest The Hero
- 出版社/メーカー: Protest the Hero Inc.
- 発売日: 2016/08/24
- メディア: MP3 ダウンロード
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複雑・高難度の曲ばかりですが、彼らの魅力は独創的なPVにもあります。
▼大人気曲"Blindfolds Aside"の処刑PV
この演奏力・作曲力で、当時のメンバー平均年齢が20歳!!「すごいバンドが出てきた…」というのが素直な気持ちでした。若さと勢いに任せた、とにかく出来ること全部を詰め込んだエネルギッシュなアルバムです。
ベースの聴きどころ
ベースの演奏も相当テクニカル。
- 1曲目"No Stars Over Bethlehem"から、ギターとの高速ユニゾン、タッピング、変拍子リフなどバシバシ決めてくる。
- 続く2曲目"Heretics & Killers"ではスラップも織り交ぜてくるなど、非常に演奏の幅が広い。
- 6曲目"Blindfolds Aside"の終盤では、しっとりしたボーカルのバックをタッピングで伴奏。PVでもその様子が少しだけ見られます。
Fortress (2008年)
セカンドアルバム。よりメタリックに。前作のような若々しさ・尖った演奏はなく、少し落ち着いた印象。一番聴きやすいアルバムかもしれません。
ストリングスやシンセっぽい演出も入り、前作が閉塞的なイメージなら今作は開放的でスケールアップしたイメージ。
今もライブで人気の"Bloodmeat"をはじめ、フックのある曲が並びます。ザクザクの刻みとタッピングを駆使したギターリフも印象的なものが多いです。
このアルバムもPVがとにかくカッコいい!
▼代表曲"Bloodmeat"
▼どこかアカデミックな雰囲気の"Sequoia Throne"
▼ちょっとふざけてみました。船長になりたかったらしい。
ベースの聴きどころ
- 1曲目"Bloodmeat"終盤の流れるようなタッピング。
- 3曲目"Bone Marrow"イントロのスラップ。
- 7曲目”Spoils”ドラムとのキメのタッピング。
どの曲も、荒れ狂うギターのバックでメロディックで挑戦的なベースラインを聴くことができます。
Scurrilous (2011年)
サードアルバム。今回紹介する4枚の中では一番地味なイメージ。音作りがやや丸いからでしょうか?曲は十分にスリリングですし、新しいサウンドも聴くことができるのですが。
女性ボーカルを大胆に取り入れた"Hair-Trigger"が今作のキラーチューンです。
▼おふざけ満載のPV。曲に合ってるんだかどうだか…。
▼このPVは超真面目。ギャップに惚れる。
ベースの聴きどころ
- 1曲目"C'est La Vie"の中間、ゆったりとしたセクションのベースライン。歌うベースラインが美味しい。
- 6曲目"Dunsel"イントロのハーモニクス。Dream theaterの匂いがする。
※ちなみに日本版にはボーナストラック"To Porter,With Love"というインスト曲が収録されています。
Protest The Hero - To Porter, With Love - YouTube
これはこれでカッコいいのですが、インストで聴くとVo.ロディの存在の大きさを感じます。「バンドの顔」というのは、まさに彼のようなフロントマンのことを言うのでしょう。
Clarity (2013年)
4枚目のスタジオアルバム。
前作のリリース後、ドラマーのモウが脱退。今作はなんとクリス・アドラー(lamb of god)がサポートとしてレコーディングに参加。これはメタルファンにとって嬉しいサプライズでした。クリスの強烈な足技を絡めたドラミングを堪能できます。
クラウドファンディングで資金を募り、製作されたアルバムでもあります。
前作はやや地味な曲が多かったですが、今作は「尖っていた彼らが帰ってきた!」という印象。シャウトやスクリームの割合も高まり、よりメタルらしくなりました。一番オススメしたいアルバムです。
▼PVがふざけまくっていて最高。(スタートレックVSスターウォーズという謎の展開。曲との関連性は不明)
▼このアルバムで個人的に推したいのは2曲目"Drumhead Trial"。ギターリフがロックマンみたい!伝わりますかね…?この曲でも女性ボーカルとのデュエットが炸裂。
▼また8曲目"Mist"のような底抜けに明るい曲も。彼ららしさを失わず、挑戦的に曲作りに取り組む姿勢は非常に好印象。
これまでのファンは勿論、メタルファンにも是非聴いていただきたいアルバムです。
ベースの聴きどころ
- 6曲目"Plato's Tripartite"のドライブ感のあるベースライン。
- 8曲目"Mist"中盤の浮遊感のあるベースライン。
残念ながら、ファーストアルバムからベースを担当してきたBa.アリフ・ミラドルバギがこのアルバムを最後に脱退。今作のツアーでも後任のベーシストがサポートとして演奏していました。キラリと光る個性的なベースラインが多かっただけにショックです。
おわりに
2016年には新しいドラマー・ベーシストを迎えてミニアムバムをリリース。4作目の延長線上にある音楽性で安心して聴けますので、こちらも興味があれば是非。
リアルタイムで追い続けてきたProtest The Hero。今後も彼らの活動に目が離せません。
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