重六低音 おもろくべーす

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音楽生活をもっと"おもろく"!ラウド系6弦ベーシストSUMI-chang(すみちゃん)が、誠実にヘビーメタリックに綴ります。

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Nasum スウェーデン産「哀愁グラインドコア」バンド フルアルバム全4作レビュー

メタル・ラウド系6弦ベーシスト

轟音ファクトリーのSUMI-chang(すみちゃん)です。

今回はスウェーデングラインドコアバンド"Nasum"(ナザム)のフルアルバム全4作レビュー。メタルファンにもおすすめできる「哀愁」を帯びたグラインドコアバンドです。

 

はじめに

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ナザム(NASUM)は、スウェーデン・エレブルー出身のグラインドコアバンドである。
彼等のサウンドは、昔のナパーム・デス(『Mentaly Murderd』(1992年,EP)、『The Peel Sesions』(1993年)辺りのグラインドコアサウンド)に、エントゥームド、カーネイジに通じる北欧デスメタルのギターサウンドを加え、それに地元スウェーデンのハードコア/クラストコアの要素や、現代的なブルータリティの要素を加えた、ゴア要素のないストレートなグラインドコア
リラプス・レコードと契約してリリースした1stアルバム以降アンダーグラウンド・シーンで人気が高まり、レコード会社のサポートもあって積極的にツアーを行うようになる。その後も順調にアルバムをリリースし、3rdアルバムでは母国スウェーデンで国営ラジオ局による「ベスト・ロック/メタル」アウォードを始めいくつかの賞を受賞するなど着実に人気を高めていくが、2004年末にリーダーのミエツコ・タラーツィクが、休暇に訪れたタイでスマトラ沖地震に巻き込まれ死亡したことによって2005年に活動を終了した。

 ナザム - Wikipedia

 

ブラストビートや高速2ビートなど、攻撃的なドラムを主軸にしたストレートなグラインドコアバンドです。曲も1分~2分台、1枚のアルバムに20曲~30曲もぶち込んでくるあたり、グラインドコアバンドらしいと言えます。

彼らの個性は「哀愁感」。泣きのメタルに通じる、もの悲しさ・儚さを感じる楽曲が多いです(特に後期2作品)。こういったハードコアバンドは、からっと乾いたやんちゃな音が多いですが、さすが北欧スウェーデン産。湿り気のあるマイナー感は彼らにしか出せない魅力です。

またリードヴォーカルのミエツコのシャウトは、力強さよりも悲痛感が強く「弱者たちの怒り」を代弁してくれているようで好感が持てます。社会的なメッセージが込められた歌詞によくマッチしています。

初期作品ほどハードコア感が強く、後期になるほどメタルっぽくなります。ハードコアファンの方は1stアルバムから、メタラーは4thアルバムから順に聴かれることをおすすめします。

※残念ながら、リーダーのミエツコはスマトラ島沖地震2005年に他界。個人的にグラインドコア界のホープだと信じていたので、当時ニュースを知ったときは非常にショックでした。

 

Inhale / Exhale (1998年)

Inhale Exhale

全38曲を45分で駆け抜ける、超速グラインドコア。アルバムはVo.Gt.ミエツコとDr.アンダースの2人体制で制作。高音のシャウトをミエツコが、低音のグロウルをアンダースが担当しています。

彼らの曲のすごいところは、1分台の曲にも展開があること。投げやりな曲は1曲たりともなく、38曲それぞれに個性があります。さすがにアルバム1枚聴き通すには体力が必要ですが、この手のバンド好きであれば最後まで退屈することはないでしょう。

アルバムタイトルになっている"Inhale / Exhale"はミドルテンポの曲。疾走曲の間にさらっとこういうグルーヴのある曲を挟み込んでくるあたり、彼らのセンスを感じます。


Nasum - Inhale Exhale

ベースの聴きどころ

ベースはミエツコが弾いているらしく、基本的にはギターリフとのユニゾングラインドコアバンドには珍しくミックスのバランスがよく、ゴリゴリしたベースがよく聞こえます。

特にミドルパートは破壊力抜群で、2曲目"The Masked Face"後半のグルーヴ感のあるリフはお気に入りです。


Nasum - The Masked Face

Human 2.0 (2000年)

Human 2.0

セカンドアルバム。基本的には前作と方向性は変わっていないが、さらにメタル要素が増え、曲の展開もバラエティ豊かに。しかし全く攻撃力は衰えていません。

このアルバムからベーシストのイエスパー・リヴロッドが正式に加入、3ピースのグラインドコアバンドになります。当時のライブ映像では彼の激しいライブパフォーマンスが見られます。


Nasum - Kulturbolaget, Malmo, Sweden 13.03.01

ベースの聴きどころ

アルバム全編通して、ゴリゴリのベースを聴くことができます。ミックスの関係で前作ほどクリアではありませんが。

キラーチューンの"Shadows"は、切ないギターフレーズとベースの低音が絡み合うパートが聴きどころ。名曲です。


Nasum - Shadows

Helvete (2003年)

HELVETE

Nasumの名盤というと、このサードアルバムを挙げる方が多い印象。理由はシンプル。めちゃくちゃかっこいいから。私SUMI-changも激推しの1枚です。


Nasum - Scoop

グロウルは随分と控えめになり、その代わりミエツコのシャウトを全面に押し出した曲が増えました。オーソドックスなメタル・スラッシュ・デスメタル好きにもアピールできそうな、素直にかっこいい!と思えるサウンドになっています。

曲の個性もさらに際立ってきており、印象に残るフレーズが多いです。冷たさの中に切なさを感じるギターリフ。キャッチーとさえ言えるグラインドコアバンドはNasumくらいでしょう。それでも十分に重いし激しいですけどね。間違ってもチャットモンチーみたいなキャッチーさを求める人に聴かせてはいけません。引かれます。

ベースの聴きどころ

2曲目"Scoop"、4曲目"Stormshield"、7曲目"Relics"のミドルパートで、うねるベースライン。17曲目"The Everlasting Shame"のイントロでは、激しく歪んだベース。ベーシストが反応する率は全アルバム中1番でしょう。


Nasum - Stormshield

 

Shift (2004年)

Shift

メンバーチェンジ後の4枚目。ミエツコ、アンダースのオリジナルメンバーを残して、新たなメンバーが2人加わりました。

ツインギターになったからか、さらにメタル化が進行。相変わらずドラムは暴れまくっているが、バンド全体の耳あたりは少しずつマイルドに(ハードコア基準のマイルドなので、当てにしないでね)。

音作りもモダン・クリア。複雑なリフも一音一音鮮明に聞こえます。破壊力のあるリズム隊の上に切なさ全快のギターリフが乗っかる、胸キュングラインドコアサウンド。ファーストアルバムの頃と比べるとアンダーグラウンド感は減退しましたが、彼らの魅力である哀愁感は全アルバム中ナンバーワン。2曲目"The Engine Of Death"では何とギターソロまで飛び出してびっくり。


Nasum - The Engine Of Death

 

ミドルテンポの曲も切れ味抜群。こういう曲がアクセントになって、アルバム最後まで聴かせてしまうバランス感覚は素晴らしい。


NASUM - "Wrath" (Official Music Video)

 

このアルバムのリリース後、ミエツコは休暇で訪れたスマトラ島津波の被害に遭い他界。本当に残念で仕方ない。間違いなくビッグなバンドになっただろうに…。

活動休止後、代わりのメンバーを迎え再結成ライブも行ったようだが、いまいちピンとこず。やっぱりミエツコのシャウトじゃないとこのバンドは成り立たない。

おわりに

聴く人を選ぶ強烈なバンドではありますが、是非メタルファンの方に聴いていただきたいです。Nasumの魂を引き継いだバンドが今後登場するのを期待します。

 

heavy6bass.hateblo.jp

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