重六低音 おもろくべーす

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音楽生活をもっと"おもろく"!ラウド系6弦ベーシストSUMI-chang(すみちゃん)が、誠実にヘビーメタリックに綴ります。

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CYNIC 宇宙を感じるプログレ アルバム3作レビュー

メタル・ラウド系6弦ベーシスト

轟音ファクトリーのSUMI-chang(すみちゃん)です。

今回は、プログレメタル・ロックバンド"CYNIC(シニック)"のフルアルバム全3作のレビュー。宇宙を感じる超個性派バンドです。

 

はじめに

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シニック(Cynic)は、アメリカ合衆国出身のプログレッシブ・ロック・バンド

1993年のアルバム「フォーカス(Focus)」ではデスメタルとジャズ・フュージョンを高次元的に融合し、テクニカルデスメタル(またはプログレッシブデスメタル)というジャンルの一つの完成形を創り上げた。デスヴォイス(グロウル)の他にもヴォコーダーを使用し、機械音声のようなボーカルが特徴で、宇宙的且つ浮遊感のある独特の世界観を持っている。

シニック - Wikipedia

 

独特な世界観、浮遊感のある音像、他に似たバンドが思いつきません。

ウィキペディアに書かれているとおり、初期はデスメタルにジャズ・フュージョンを融合させたような音楽性。アルバムを重ねるごとにデスメタル→メタル→ロックと 少しずつ進化してきましたが、軸は全くブレていません。

紹介するアルバム順(リリース順)に聴くことをおすすめしますが、どれを1番に手にとってもらっても彼らの魅力は十分に伝わります。

ベーシストなら、Ba.ショーン・マローンのフレットレスベースの響きに耳を奪われること間違いなし。必聴です。

フォーカス- Focus (1993年)

Focus

デビュー作。刻みの多いギターにツーバスを絡めたドラム、デスボイスと、要素だけを書き連ねると確かにデスメタル

彼らをただのデスメタルの範疇に留めておかないのは、ヴォコーダーを使った浮遊感のあるボーカル、フレットレスベースの存在、そしてジャズ・フュージョン的な曲展開にあります。

 

▼百読は一聴にしかず。


Cynic - Veil of Maya

 

僕はリアルタイムで聴いたわけではなくて、初体験は再販のリマスターバージョン。ガッチガチのメタルリフの合間を自由自在に飛び回るフレットレスベースに心を奪われました。

ジャケットのアートワークのように、無機質でありながらどこか宇宙的なものを感じる唯一無二の音。その後のプログレメタルシーンや、メシュガーなどdjentシーンにも多大な影響を与えたとされていますが、日本国内での認知度は低かったようです。現在はメタルのディスクレビュー本に必ずと言っていいほど掲載され、評価されていますね。(当時アルバムはすぐに廃盤。幻の名作と言われていたらしいです。)

 

ベースの聴きどころ

全編通して、もっちりとした独特のトーンが堪能できます。

強いて上げるなら7曲目のインスト"Textures"で目立つベースソロを聴くことができます。

▼2:25~ ベースソロ


Cynic - Textures

 

素晴らしい作品ですが、この1枚を残して解散

2作目が世に出るのは15年も後になります。

 

トレースド・イン・エア- Traced in Air(2008年)

Traced in Air

「CYNICの再結成」と聴いて驚いたのは僕だけではなかったはず。音源に先立って公開されたジャケットのアートワークに「きっと大丈夫。あのCYNICが帰ってくる」という確信が。

2008年にリリースされたセカンドアルバムは、期待通り前作の音楽性を引き継いでいます。デスボイスの占める割合がぐっと減り(ポイントを絞って効果的に使われている)、音作りも非常にクリアで現代的。一般的なメタルリスナーにも受けそうな聴きやすい曲が増えました。ヴォコーダーのメロディーも口ずさみたくなるものばかり。

だからといって決してセルアウトを狙ったアルバムではなく、非常にマニアックで濃密な楽曲が並ぶ。異次元を旅するような、不思議な感覚を味わえます。

 

ベースの聴きどころ

前作同様、全編にわたってフレットレスベースが暴れまくっています。

特に1曲目~4曲目の流れが素晴らしい。2曲目"The Space For This"のイントロでは美しいベースの響きが堪能できます。


Cynic - The Space For This

 

 

カインドリー・ベント・トゥ・フリー・アス- Kindly Bent to Free Us(2014年)

Kindly Bent to Free Us

サードアルバム。このアルバムをリリース後、CYNICは再び解散することになります。

デスメタル→メタルと進化し、ついにこのアルバムではメタル要素すら身を潜めることに。どこからどう聴いてもCYNICであることは間違いないのですが。包み込むような優しささえ感じる不思議な1枚。

2曲目"The Lion's Roar"は「ライオンの咆哮」というタイトルに反して、メジャー調の爽やかな曲。もはやメタルではないかもしれませんが、アルバムでも特に大好きな1曲です。


CYNIC - The Lion's Roar (lyrics video)

 

ベースの聴きどころ

アルバム3作を通して、ベースの音像が最もクリアで聴きやすいです。

2曲目"The Lion's Roar"でメジャースケールを自在に駆け上がったり駆け下りたり、スリリングな演奏を聴くことができます。

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5曲目"Moon Heart Sun Head"は、音源から判断するに恐らくチャップマンスティックを使用しています。タッピングのニュアンスが足されたような不思議なベースラインは超個性的。


Cynic - Moon Heart Sun Head (Official Lyric Video HQ)

 

おわりに

今や「プログレ・メタル」というと珍しくも何ともなく、一般的なジャンルになりました。そんな中でもぶっちぎりの個性をもったバンドがCYNIC(シニック)。

宇宙を感じたい方は是非。

部屋を暗くして、ヘッドホンでゆったり聴くのがおすすめです。