SikTh 渦巻く変拍子と旋律と叫び アルバム3作レビュー
メタル・ラウド系6弦ベーシスト
轟音ファクトリーのSUMI-changです。
今回は大好きなバンドSikTh(シクス)のフルアルバム全3作(2017年現在)をレビュー。ベースの聴きどころも解説していきます。
- The Trees Are Dead & Dried Out Wait for Something Wild (2003年)
- Death of a Dead Day (2006年)
- The Future In Whose Eyes? (2017)
- おわりに
The Trees Are Dead & Dried Out Wait for Something Wild (2003年)
SikThのデビュー作。1曲目"Scent of the Obscene"イントロのスラップベースとテクニカルなドラムで1発ノックアウト間違いなし。当時はまだまだ動画サイトが活発ではなく、CDショップでの試聴がバンド選びの主流でした。お店で試聴して「なんだこれ!?」とぶっ飛んだ人も多かったのでは?
今でこそDjentのパイオニアと言われていますが、当時は「プログレッシブ」「カオティック」「分類不能」と形容されることが多かった。この手のバンドでツインボーカルというのも新鮮でした。
ファーストアルバムの魅力はVo.マイキー・グッドマンの「場違い」ともとれるアバンギャルドなシャウト。ウィスパーボイスやポエトリーリーディングもこなす雑食系ボーカリストとして異彩を放っています。
楽器隊も相当にテクニカル。変拍子や高速のユニゾンはもちろんのこと、独特のコード感をもった曲が多く、SikThにしか創り出せない世界観を早くも構築しています。後に多くのフォロワーバンドを生むことになるが、彼らの音楽性は本当にぶっちぎっている。
バリバリの変拍子に乗せてエモっぽく歌い上げる"Peep Show"、独特なPV世界観が魅力の"How May I Help You?"など、聴き応えのある楽曲が並ぶ中、ピアノインストや民族音楽的な要素も織り交ぜてくる、ごった煮感が非常にクセになる。発売から14年たった今もヘビロテ中の名盤!
ベースの聴きどころ
- 1曲目"Scent of the Obscene"のイントロのスラップ。ここからSikThワールドが始まった。
- 4曲目"Skies of Millennium Night"のクライマックスのタッピング。ギターとのユニゾンプレイはテクニカルなだけでなく、不思議な浮遊感のあるフレーズが耳を離れない。
- 12曲目"(If You Weren't So) Perfect"のイントロに続くハーモニクスを絡めたプレイ。
ちなみに日本版のボーナストラックに同郷イギリスの大先輩アイアンメイデンの"Wrath Child"のカバーが収録されています。SikTh風にぶっ飛んだカバーかと思いきや、意外と原曲に忠実です。
Death of a Dead Day (2006年)
衝撃のデビュー作から3年、待望のセカンドアルバムがこの"Death of a Dead Day"。バンドの方向性はそのままに、さらに重さと勢いを増したような超重量級変態サウンド。変拍子とリフの嵐に飲み込まれます。
前作のエキセントリックな要素は少し影を潜め、サウンドは硬質に・世界観はシリアスに。よりメタルファンに好まれそうなアルバムになっています。
全曲テクニカルギターのオンパレード。ドラムの足技もグルーヴ感があって気持ちいいです。
Sikth - Bland Street Bloom HD 2011
ベースの聴きどころ
- 1曲目"Bland Streat Bloom"のサビ、LowAサウンドの超ヘビーなボトム。
- 4曲目"Summer Rain"のスラップ。ギターもスラップし始めて、驚異のチョッパーユニゾンが展開。
- 12曲目"As The Earth Spins Round"の中盤、美しい旋律のタッピング。
このアルバムリリース後、2008年にSikThは一度解散することになります。
The Future In Whose Eyes? (2017)
2016年の再結成EP"Opacities"を挟んで、2017年にリーリスされた目下最新作。
マイキー・グッドマンと双璧をなしていたVo.ジャスティン・ヒルがバンドを脱退。後任としてジョー・ローサーが加入。ジャスティンが担当していたメロディーとシャウトパートを歌っています。
正直なところ、なんだかちょっと丸くなりました。元ペリフェリーのベーシスト、アダム”ノリー”ゲスグッドがエンジニアを担当しており、切れのいいサウンドであることは間違いないのですが、前2作のような強烈にとがった個性が薄まったように感じます。
新加入のボーカル・ジョーは、メロディーパートこそジャスティンの雰囲気を継いでいますが、ジャスティンの焦燥感のあるシャウトに比べると物足りない。マイキーとジャスティンのボーカルスタイルの対比がバンドの肝だっただけに、重心の低いジョーのボーカルは楽曲に馴染みはするもトゲがない。良くも悪くもマイルドになった印象です。
とは言え、最前線に戻ってきたことは素直に嬉しい。今後のバンドの動向に注目です。
ベースの聴きどころ
- 1曲目"Vivid"のイントロ。ファーストアルバムのイントロを思わせるスラップで幕を開ける。
- 6曲目"Cracks of Light"の後半のタッピング。(ちなみにこの曲にはペリフェリーのボーカル・スペンサーがゲスト参加している。)
- 10曲目"No Wishbones"のイントロ。Djentっぽいゴリゴリのベースライン。
SikTh - Vivid (Lyrics video) (from The Future In Whose Eyes?)
おわりに
多くのフォロワー、そして現在のDjentシーンの基礎を作り上げたSikTh。
どの楽曲・アルバムも恐ろしい完成度を誇りますが、個人的におすすめはやはりファーストアルバム"The Trees Are Dead & Dried Out Wait for Something Wild"。ぶっ飛んだ世界観・音楽性を求める、血の気の多いメタルファンには是非聴いていただきたいです。
ファーストアルバムより、ファニーなPVで人気の"How May I Help You?"でお別れです。